2024.10.01
税務・会計コラム

税制適格ストックオプションの利便性向上について

  • #所得税

ストックオプションとは、新株予約権を活用した中長期の株式報酬制度です。
役職員等に対し会社業績や株価向上への貢献を促すほか、人材採用などを目的に無償で新株予約権を付与します。

一定の要件を満たした税制適格SOの場合、権利行使時の取得株式の時価と権利行使価額との差額に対する給与所得課税を株式売却時まで繰り延べ、
株式売却時に売却価格と権利行使価額との差額を譲渡所得として課税する制度です。

権利付与時の株価が1万円だとして権利行使時の株価が5万円とすると、差額の経済的利益4万円が課税繰延されます。
株式売却時の株価が10万円だとすると、当初の付与時の株価1万円と売却時の株価10万円との差額9万円に対して譲渡益課税がされることになります。

権利行使価額の限度額について、改正前は発行会社の種類等を問わず「⼀律年1,200万円」でしたが、
令和6年税制改正後は発行会社の設立年数や上場・非上場の区分に応じて「最大年間3,600万円」に引き上げられることになりました。

具体的には“設立年数が5年未満”の発行会社の場合は、改正前の2倍の「年間2,400万円」になっています。

“設立年数が5年以上20年未満の会社で、非上場会社あるいは上場後5年未満の会社”の場合は、改正前の3倍の「年間3,600万円となっています。
この区分が最大です。スタートアップ企業が成長している段階だからです。

発行会社が“設立年数20年以上”の場合や“設立年数が5年以上20年未満だけど上場後5年以上の会社”の場合は、
引上げ対象とならず、改正前と同様「年間1,200万円」となります。
この区分はスタートアップ企業とは言えないからであると思います。

スタートアップが大きく成長するためには、事業が軌道に乗り安定する時期から
上場前後にかけて企業価値が高くなった時期に優秀な人材を確保する必要がある観点から、
改正後は企業価値が高い時期の発行会社について限度額を引き上げています。