国税庁は、令和7年7月より相続税の税務調査などに人工知能(AI)を本格的に導入しています。
具体的には、過去の申告書等を分析したAIが申告漏れの可能性の高さをリスクとして0~1にスコア化し、対象となる2023年以降に発生したすべての相続税申告書にスコアを付し、調査の優先順位を自動的に選別するということで、スコアが高いほどリスクが高いと判定され、調査の可能性が高くなるということです。
近年の経済社会では、さまざまな取引の多様化、複雑化が進展する中で、これに対応する税務職員の人手不足が懸念されることから、国税に関連する手続きや業務の在り方を抜本的に見直すべく、税務行政のデジタル化が推進されていることがその背景にあります(注1)。
国税庁が公表した資料(注2)によりますと、すでに、調査の選定にAIを本格的に導入・運用している法人税及び源泉所得税では、令和5事務年度の追徴税額が、法人税2,102億円(前年対比112.5%)、源泉所得税375億円(前年対比110.9%)と、過去最高額だった2022事務年度をさらに上回る高水準であることから、相続税においても、同じような状況になることが予想されます。
今後はAIの活用が進むことにより、調査の選定の精度が高まり、相続税の調査件数は増加すると予測されますので、これまで以上に正しい情報の収集と把握に基づいた正確な申告が必要です。
(注1)国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(令和6年6月)」
(注2)国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和6年11月)」